商標を出願してから商標登録を受けるまでの無断使用は止められる?金銭的請求権とは
商標登録出願をすると、特許庁の審査を経て実際に商標が登録されるまでには通常4ヶ月~6ヶ月、長い場合は1年以上かかります。登録されるまでの間に、他の誰かがその商標を使って商売を始め、利益を得ようとするという可能性は決して否定できません。
そのような場合に備えて設けられたのが、金銭的請求権の制度です。金銭的請求権とは、商標出願をしてから実際に登録されるまでの間に、当該商標を無断で使用している第三者に対して金銭を請求できる権利のことを言います。では、金銭的請求権ができた経緯とその要件について見ていきましょう。
金銭的請求権ができた経緯とは
平成11年、日本は「標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書」に加入しました。これは、加入すれば日本の商標法上の登録または出願を基礎として、商標の保護を求める国を指定すれば、国際登録出願の手続きも同時にできるというものです。
マドリッド協定議定書に加入に際し、同年改正商標法の中に新たに設けられたのが金銭的請求権の制度になります。この議定書には国際登録日以降その商標が保護される旨が定められており、国内における商標登録の効果との整合性を図る必要がありました。そのため、登録設定前の商標を保護すべく金銭的請求権が設定されたのです。
金銭的請求権行使のための要件とは
金銭的請求権を行使するためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
・商標登録出願していること
・商標登録出願人が出願内容を記載した書面で相手に警告すること
・警告後に相手方がその商標を使用したこと
・相手方がその商標を使用したことにより、出願人が業務上の損失を受けたこと
ただし、金銭的請求権を行使できるのは実際に商標が設定登録された後となります。これは、登録出願された商標すべてが登録されるわけではない、という実情があるためです。もちろん、出願された商標が登録後に取り消されたり無効審判によって無効とされたときには、金銭的請求権は最初からなかったものとみなされます。
また、金銭的請求権にも時効があります。商標の設定登録から3年間権利を行使しなければこの請求権は消滅することになるので注意が必要です。
金銭的請求権を行使するためには、実際に経済的な損害が生じている必要があります。第三者が当該商標を設定登録前に無断で使用した事実があったとしても、出願人がその具体的な損害金額を立証できなければ金銭的請求権を行使することは困難となるでしょう。