他人の商標登録を防ぐ方法はありますか?|情報提供・異議申立
そのため、商標審査基準を満たしていない商標は、基本的には登録されません。
商標登録出願ではまず、商品の出所を示して、ほかの商品と区別できる、標識としての機能を果たしているかが問われます。
他の企業の商品やサービスと区別しにくいような商標や、すでに登録されている商標と同一、または類似した商標は登録できません。
また、公共性が強く特定の個人や団体が独占することが妥当ではない、公序良俗に反するなど、あらかじめ商標登録できないと定められている「不登録事由」に該当すると判断されれば、拒絶されます。
しかし、いかに特許庁の審査官といえども、すでに同一、または類似した商標登録がされているのを見落とすこともあり得ます。
そして「不登録事由」に該当するか否かグレーゾーンにある商標に関しては、必ずしも拒絶されるわけではありません。
万一、商標としてふさわしくないものが商標登録され、その権利を特定の個人や企業が独占することになれば、産業の発展を阻害する原因ともなりかねません。
そこで、「その商標は、登録すべきではない」とする理由のある商標登録を阻止できる、「異議申立(登録異議の申し立て)」や「情報提供」といった制度が設けられているのです。
異議申立と無効審判
誰かが出願している商標が登録されると、特許庁が発行している「商標公報」に掲載されます。
公報には、商標権者の氏名・住所、商標登録出願番号、願書に記載した商標と指定商品(または役務)などが掲載され、どのような商標の商標権が、誰に認められたかを、世間一般に公示することになります。
この商標公報に掲載された2ヶ月以内であれば、商標法施行規則第12条に則る書式で作成された「異議申立書」を特許庁長官に提出して、商標登録にふさわしくない理由を申し立てることができます。
とはいえ異議申し立ての理由は、「個人的にふさわしくないと思う」では通じません。
すでに同一、または類似の登録商標がある、普通名称や慣用商標にあたる、商標登録の要件を満たしていない、など商標法に規定された正当な理由が必要です。
異議申立てを受けた商標は、3名または5名の審判官により審理が行われます。
そして、異議に理由があると判断されれば、登録取消の決定がなされます。
もし商標登録が取消となったばあいには、商標権者には、登録取り消しに対して反論する意見書を提出する機会が与えられています。
【無効審判】…すでに登録された商標登録に異議を申し立てる制度
異議申立の期間は、公示された日から2ヶ月と期間が決まっていますが、すでに登録済みの商標に対しても、無効にすべき理由があれば無効審判(商標登録の無効の審判)を請求することができます。
ただし、無効審判のばあいは誰でも請求できるわけではなく、請求者は商標権侵害で訴えられている、同一、または類似の商標で商売しようとしているなど、その商標登録の利害関係者に限られます。
情報提供
商標登録が公示、または登録されたあとに請求する、異議申立や無効審判。
対して「情報提供」は、「特許庁に係属している商標登録出願」、つまり商標登録出願中の申請に対して行われます。
この情報提供は、商標法ではなく、施行規則で運用として定められた制度です。
審査段階で、この商標は登録すべきでないという「参考情報」を、「刊行物等提出書」という書類にしてまとめ、特許庁の審査官に対して提供します。
手続きは無料で、商標登録出願人とビジネス上の付き合いなどがあり、情報提供者として名前を出したくないばあいは、匿名で提出することも可能です。
もし、自分のビジネスに関連して、大きく利益を損なうような商標が独占される恐れがある出願があれば、この情報提供を利用して、早めに対応することは決して損はないといえます。