キャッチコピーやキャッチフレーズは、商標登録できますか?
これまで、こうした簡潔な宣伝文句は、商標登録で認められるための商品やサービスを区別する目印としての機能を充分に果たしていないとされ、原則として、商標登録の対象とされていませんでした。
2016年4月、1971年に商標の審査基準が公表されて以来、実に45年ぶりとなる大幅な改定が行われ、こうしたキャッチフレーズに関しても、審査段階で認められる類型を増やし、円滑に登録できるようになりました。
今回は、この企業のキャッチフレーズの商標登録出願に関する、新しい審査基準についてお伝えいたします。
これまでのキャッチフレーズの審査基準とは
「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、原則として、第3条1項6号(註:消費者が誰の業務か区別できないような商標)の規定に該当するものとする」
と記載されていました。
つまり、キャッチフレーズの商標登録は「原則拒否」。
商標登録が認められるか否かは、特許庁の審査官の判断に委ねられる部分が大きいため、一度拒絶されてから、不服審判で登録されるケースが少なくありませんでした。
このばあい、まず「拒絶査定謄本」が送達され、出願人はその拒絶を不服とする理由として充分な証拠をそろえたうえで『拒絶査定不服審判』を特許庁に申し立て再審査を請求する、かなり面倒で専門性の高い手続きを経て、ようやく登録が認められることになります。
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【改定以前、例外的に商標登録が認められたキャッチフレーズの例】
・ダイハツ工業の「Innovation for Tomorrow®」
・第一三共の「つくっているのは、希望です®」
・マスターカードの「プライスレス®」
・本田技研工の『The Power of Dreams®』
・日立製作所の『Inspire The Next®』
など
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こうした大企業の、テレビのCMで繰り返し使われているようなおなじみのキャッチコピー、キャッチフレーズであってさえ、商標の目的にあった出願であることを証明して、不服審判で登録が認められるまでは、大きな時間とコストがかかっていました。
ましてや中小企業や個人にとって、キャッチフレーズの商標登録は非常に難しい、リスクと負担の大きい知財戦略であったといえます。
商標登録のルール変更で、新たに設けられたキャッチフレーズの審査基準
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1) 特定の商品宣伝にならずに企業理念を反映したもの
2) できるだけ抽象的な表現を用いていること
3) 一定期間利用して独自性があること
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など、原則拒否から転じて、新たな審査基準が設けられています。
商標登録するキャッチフレーズ等が商号などを含む、ロゴなどの図形と一体化している、長期間使っている、これまで第三者が類似のフレーズを使用していないなど、具体的な要件を満たしていれば商標として認められ、登録される可能性が生まれました。
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この改定により、一概にキャッチフレーズを商標登録する審査基準そのものが緩くなった、と言うことはできません。
しかし、これまではただ「原則拒否」とされていたキャッチフレーズの商標登録出願で満たすべき要件が明確になったことで、中小企業や個人でもキャッチフレーズの商標登録も現実的となった、知財戦略上非常に大きな意義を持つ改正といえます。
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