『商標権』と『実用新案権』の違いとは|知的財産権の基礎知識
こうした人の知恵から生み出された価値あるアイディアは、「知的財産」と呼ばれています。
この知的財産のうち、産業の発展を図る産業財産権に含まれるのが「商標」「実用新案」「意匠」「特許」の4つの権利。
今回は、形のない大切な「財産」を守る、商標権・実用新案権など4つの権利の意味と役割、保護する対象の区別についてご説明します。
「商標権」「実用新案権」の違いとは
実用新案権も商標権も、どちらも形を持たない「無体財産」が他者に模倣され、その権利を侵害されないように保護するためにある制度です。
商標権が、ブランドのネーミングなど商品やサービスを区別して保護するのに対して、実用新案権は、物品の形状、構造または組み合わせに係わる具体的なアイディア(カラクリ)を区別して、その権利を守ります。
例えば、同じボールペンでも、そのブランド名を守りたいなら「商標権」、いつまで書いても手が疲れにくいような構造上の工夫を守るなら「実用財産権」または「特許権」を、それぞれ登録しておく必要があります。
「意匠権」や「特許権」との違いは?
おなじ「物品の形態」に関する産業財産権である「意匠権」は、物品の「視覚的なデザイン」、つまり見た目の美しさを保護します。
対して実用新案権で保護されるのは、物品の形態に関する自然法則による技術思想の創作、つまり製品の具体的なカラクリです。
また、おなじく自然法則による技術思想の創作を保護する特許権では、「物(プログラムを含む)」「方法」「物の生産方法」に関する、従来技術からは容易に思いつくことができない「高度」な発明を保護対象にしていますが、実用新案権で保護されるのは「物品の形状、構造または組み合わせ」に限られています。また、考案内容に特許のような高度さは求められません。
思いついたアイディアを守りたい!特許登録出願と実用新案登録出願、どちらが有利?
日用品の構造を工夫した具体的なアイディアは、特許、実用新案、どちらの権利にも含まれる可能性があります。
特許権が、出願後に審査で認められなければ発生しないのに対して、平成6年から無審査主義を採用された実用新案権のばあいは、基礎的な形状的条件さえクリアすれば、出願後の審査もなく、早期に発生するのが大きなメリットです。
しかし、実用新案権は登録が簡易な分、存続期間が出願日から10年と比較的短め。
また、権利を行使するには、相手の過失を立証する、侵害者に提示する「実用新案技術評価書」を特許庁に請求するなど、手続きが必要になる点がデメリットとしてあげられます。
主に「発明」といわれるものを厚く保護する特許権と、ちょっとした工夫・アイディアを早期に保護する実用新案権。
商品サイクルが短く、なるべく早めに権利化を図りたいばあいには、実用新案登録出願が有利と言えるでしょう。