キャラクタービジネスと商標
1.キャラクタービジネス
キャラクタービジネスを展開する場合、画像を登録すべきか名前を登録すべきか、指定商品・指定役務はどうするかという点で非常に悩まれる方が多いと思います。正解がある訳ではないのですが、個人的な見解を述べたいと思います。
2.画像か名前か
(1)画像
画像を権利化する場合、キャラクターですから様々な画像がありますので全てを商標権で保護するのは難しいでしょう。全てのパターンを権利化しようとしていたら、いくら費用をかけても足りません。キャラクターの代表的な画像を登録するのが一般的でしょう。
画像についてはその原画が著作物として保護される可能性が高い為、商標権だけではなく著作権でも保護されます。代表的な画像を商標登録しておけばその画像に含まれるキャラクターを多少アレンジしたものは類似範囲となり、第三者が登録してしまうことや使用することを排除できると考えます。
すなわち、代表的な画像を商標登録し、足りない部分は著作権で保護するというのがよいと考えます。商標登録するメリットですが、著作権は似ているから権利行使できるという権利ではなく、著作物を真似していたり、参考にしていたりする場合にそれを証明する必要ができてきます。従って、権利行使をするときに証明するのが大変であるというデメリットがあります。一方商標権は、同一又は類似の商標を指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務に使用した第三者がいる場合、過失の推定といって権利者が証明しなくても過失があると推定されます。第三者側が過失がないことを証明する必要があり、著作権よりも権利者側の負担が小さくなります。
(2)名前
キャラクター名については著作権は基本的に働きません。画像には著作権が生じますが、キャラクター名自体は著作物としては認められないことが一般的だからです。従って、商標権を取得するのは非常に重要なことです。
(3)画像と名前どちらを登録すべきか
ベストは画像と名前の両方です。しかし、上記したように画像については著作権でもある程度保護されます。従って、どちらかという場合には名前を優先すべきだと私は考えます。
その他、キャラクターの下にキャラクター名を書いた画像を登録する場合もありますが、個人的な見解としては、商標権は登録した商標と同一性の範囲にしか使用権が生じません。もしキャラクターの下にキャラクター名を書いた画像を登録した場合、使用するときもキャラクターとキャラクター名をセットで使用する必要があります。キャラクターのみキャラクター名のみを使用する状況が多いと思いますので、キャラクターの画像、キャラクター名は別々に権利化すべきでしょう。
2.指定商品・指定役務
(1)キャラクタービジネスで行うこと
①スマートフォン等で画像を使用させる
②着ぐるみでのショーを行ったり、動画や映画をアップする
③キャラクターグッズを販売する
といったことを行うことが考えられます。
(2)スマートフォン等で画像を使用させる
最近はLINE(LINE株式会社の登録商標です。第5544081号等)でキャラクターのスタンプを提供することがよくあると思います。キャラクタービジネスでもスマートフォン等で画像をダウンロードさせることは一般的になっています。この場合に指定すべきなのは
第9類 インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル
となります。そして、第9類では「電子計算機用プログラム,電子出版物,家庭用テレビゲーム機用プログラム」といった商品も含まれます。これらも一緒に指定されるべきでしょう。
(3)着ぐるみでのショーを行ったり、動画や映画をアップする
Youtube(グーグル エルエルシーの登録商標です。第4999382号等)、ニコニコ動画(株式会社ドワンゴの登録商標です。第5098492号)等で動画をアップすることもキャラクタービジネスにはかかせなくなっています。この場合に指定すべきなのは
第41類 映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演劇の演出又は上演,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)
となります。第41類は教育及びエンターテイメントに関する区分であり、キャラクタービジネスではメインとして必ず抑えるべきでしょう。
(4)キャラクターグッズを販売する
一番悩むのはグッズです。グッズというと非常に多数の商品が関係してきます。まずは、よくあるグッズについて述べると、
第9類 スマートフォン用カバー,スマートフォン用ストラップ
第14類 身飾品(アクセサリーなど)
第16類 印刷物,文房具類,写真
第18類 かばん類,袋物,愛玩動物用被服類
第24類 布製身の回り品(タオル,ハンカチなど)
第25類 被服,履物
第26類 頭飾品
第28類 おもちゃ,人形
のような商品があります。しかし、最初から全てを権利化するのがベストだと理解はしているもののそこまで商標に費用をかけられないといったことも多々あるでしょう。そこで活用すべきだと思うのが第35類の小売等役務です。小売等役務は、小売店の店舗名などを保護する役務ですからキャラクターグッズの保護として適切かどうかというと必ずしも適切とは言えません。しかしながら、キャラクターが一般的になるとそのキャラクター専門店などもできますので必ずしも間違ってはいないでしょう。そして、1区分で多数の商品の小売を指定できることから、キャラクタービジネスが軌道に乗るまでの間、他人が商標登録してしまうことをある程度防止できます。
私が述べているのは第35類の小売等役務を指定すべきと推奨しているのではなく、グッズとして販売する物が決まっていれば、その商品が含まれる区分、例えばタオルであれば第24類を指定するのは必須であり、第35類だけでよいと述べている訳ではありません。第35類は今後(3年以内に)提供しようとしている商品があるものの、まだ商標にそこまでかける予算がない場合に補助として利用されるのがよいということです。商品にキャラクターの画像やキャラクター名がプリントされている場合、それは小売等役務における商標の使用ではなく、各商品の区分での商標の使用です。従って、第35類だけでよいという考えには反対の立場ですからその点は理解して下さい。
(5)指定商品・指定役務のまとめ
以上よりキャラクタービジネスを展開する上では「第41類」が必須となり、その次にグッズ物を販売したり、画像を提供したりする場合にはその商品の区分+第35類を指定するのがよいでしょう。