意匠権と特許権、商標権、著作権、不正競争防止法を比較した法的権利の特徴
しかし、特許権や著作権など意匠権以外の法的権利にも、製品デザインの保護に役立つことがあります。
特許権・実用新案権
こうした場合、機能的必然性のある製品デザインを保護する目的から、意匠権以外にも同じ産業財産権である特許権や実用新案権を合わせて取得するケースも考えられます。
特許出願や実用新案登録出願の中に、意匠図面もあわせて記載していた場合は、出願の後から意匠登録出願に変更することも可能です。
実用新案登録出願中であれば登録される前はいつでも、特許出願であれば拒絶査定謄本の送達を受けた日から起算して30日以内は変更が認められています。
商標権
文字、図形や記号を組み合わせたマークの持つ商品やサービスのブランド価値を保護する商標権。
製品デザインそのものは保護の対象外で、登録に必要な要件のハードルも高い商標権ですが、営業上の標識となるような立体的な形状も「立体商標」として登録することができます。
意匠権と商標権の違いで抑えておきたいのは、存続期間の違いです。
意匠権は、毎年登録料を払って更新すれば最大20年まで存続しますが、20年以降の更新はできません。対して商標権の保護期間は登録から10年ですが、更新すれば半永久的に存続します。
そのため、意匠権で20年保護した意匠デザインが企業や商品のイメージとして広く浸透し、ブランドとして大きな価値を持つようになった場合は、商標登録出願して権利を保護することも考えられます。
著作権
大量に生産することを前提とした工業デザインに関しては著作権法上の保護が認められていませんが、製品に描かれたデザインが、純粋美術と同視しうるような場合は著作権により保護されます。
裁判所が著作権による保護対象として認めた例としては、仏壇の内部を飾っている彫刻装飾を型取りして仏壇装飾具として製造したケースや、Tシャツの絵柄を無断で模倣したケースなどが挙げられます。
意匠権と違い、著作権は特許庁に出願していなくても創作した時点で権利が発生します。しかし、製品デザインの保護の観点から見ると極めて限定された状況でのみ保護される点は留意が必要です。
不正競争防止法によるデザインの保護
模倣品や海賊版から製品デザインを守る法律として、不正競争防止法による保護も考えられます。
不正競争防止法でデットコピー商品を規制するためには、2つの方法があります。
【商品形態模倣行為(2条1項3号)】
元の商品デザインと酷似したデットコピー商品に関しては、不正競争防止法により商品の製造・販売の差し止めや損害賠償、悪質な場合は刑事罰による追求も可能です。この場合、元の商品に意匠権の有無は問われません。ただし、日本国内で製品を販売開始してから3年以内であることが必要です。
【周知表示混同惹起行為(2条1項1号)】
著名な商品の信用を保護するため、消費者から広く知られた商品のデザインを模倣したコピー商品による権利侵害に関しては、不正競争防止法により半永久的に保護されます。ただし、適用には商品が広く浸透していること(周知性具有)、消費者が混同する可能性があることの2点を証明する必要があります。